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tsukumaru2013_6   16 / 28

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ひとつのことにコツコツと向き 合う、芸術的な作業が好きだと いう伊藤さん。かつてはインドネ シアで真珠の養殖に携わってい た。繊細に貝を扱う真珠の仕事 と微妙な条件を見極めるそばの 仕事には共通点もあるようだ。 伊藤澄 (店主) いとうきよむ 運ばれてきた二八そばは、 つやつやできっちりと角の 立った、とても美しいそば だった。思わず見とれてしま いそうになるが、ぼんやりし ていてはそばのほんとうの おいしさを逃してしまう。 さっそくひとくちすすると、 豊かな香りを放ちながら爽 快に口の中に飛び込んで来 た。かむごとに増すそばの風 味だけでなく、歯ごたえも、 そばの中に活きるコシも見 事。殻ごと製粉した粉を使用 する黒挽き十割そばに至っ ては、その香りはさらに豊か に満ちていて、かみ応えも増 す。黒挽きそばは一般的には 田舎そばと呼ばれることが 多く、太麺の素朴なイメージ のそばだが、「椿野」のそれは 太めの麺ではあるものの、繊 細に切りそろえられのどご しがよく、甘みがあって上品 に感じられた。 このそばを、仕入れから管 理、製粉、そして、打ってゆで 上げるまでをひとりで行っ ているのは、店主の伊藤澄さ ん。そばは保存状態も味に大 きく影響することから、常陸 秋そばをメインに1年分を 一度に仕入れ、伊藤さん自ら 慎重に管理しながら保管。玄 そばは年度や畑によっても 味わいや大きさに違いがあ るため、使用する玄そばを見 極めその日の気温や湿度も 考慮しながら、製粉し、打っ ていく。そんな伊藤さんの そば人生は、埼玉の名店「本 宮」のそばを食べたときに始 まったという。 「あのそばに出会ってし まったから、そばの道にどう しても進みたくなったんで す。師匠は弟子を取らない人 でしたが、それは店を持つま では面倒を見切れないから という理由で、そば打ちなら 教えるから通ってきなさいと 言って指導してくれました」 伊藤さんは、本宮のご主人 に厳しくかつ親身に手ほど きを受けながらそばの技を 習得し、もう一方では調理師 学校に通ったり他の飲食店 で接客や経営のノウハウを 学んだりしながら開業の準 備を進めた。そして 10 年前の 2003年3月に「椿野」を つくばの地にオープンした。 「不思議といい縁に恵まれ て、開業でき、その後の 10 年 も歩むことができました」と 語ってくれたのは、伊藤さん をサポートしながら店にも 立つことのある母の澄子さ ひたむきにそばと向き合い 技と腕を磨く 文/北織 麻美 写真/カジュアルフォトスタジオcocoa そば処 椿野 16